性行為の後に何となく下腹部が重く感じたり、痛みが続いたりといった経験のある方も多いのではないでしょうか。
一時的なものであれば様子を見る方もいますが、性行為をするたびに痛みを感じている場合は何らかの疾患が隠れている可能性があります。
本記事では、性行為後の下腹部痛がなぜ起こるのか、またどう対処すべきなのかについてご紹介します。
性行為後に下腹部が痛くなる場合の好発部位を図にしてみました。
これらの箇所にピンポイントで痛みがある場合、該当臓器に何らかのダメージがある可能性があります。
万が一、性行為後に毎回下腹部の決まった場所が痛い場合は婦人科を受診しましょう。
性行為後に下腹部が痛む原因は、大きく分けて以下の7つが考えられます。
それぞれの原因について詳しく確認し、どれが自分に当てはまるかを確認していきましょう。
本来子宮の中にあるはずの内膜組織が、卵巣や腹腔内などさまざまな場所に増殖してしまう病気です。
生理痛が重くなることでも知られていますが、同時に性行為で強い痛みを感じる場合があります。
放置してしまうとさらに痛みが悪化したり、不妊症の原因になったりするため、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
女性の骨盤内にある臓器のうち、一つもしくは複数の臓器に炎症が起きてしまう感染症の一種です。
子宮・卵巣・卵管など炎症が起こる部位は人によって異なりますが、主な原因は性感染症といわれており、進行するとともに痛みが増していくといった特徴があります。
通常の排卵時にも軽度の出血が起こる場合がありますが、性交によって卵巣に圧力がかかり、出血量が増えて痛みを感じる場合があります。
性交のタイミングが排卵と重なってしまった場合は、卵巣出血や排卵痛を疑うとよいでしょう。特に卵巣出血の場合は1~2週間継続する可能性もあります。
稀ですが、お腹の中に大量出血を起こすことがあります。
性行為によってオーガズムに達した後、自律神経が乱れたり、筋肉が収縮したりすることで痛みを感じる場合があります。
性行為後にぐったりとして倦怠感があったり、下腹部痛に加えて頭痛を感じたりする場合もオーガズム後症候群が疑われます。
それほど症状が長引かず、時間が経つにつれて改善する場合が多いです。
悪性ではなく、良性の腫瘍が子宮や卵巣にできる病気です。腫瘍の大きさや位置によっては、性行為後だけでなく行為中も痛みを感じる場合があります。
経過観察となる場合もあれば薬物療法や手術が必要となる場合もあるため、定期的な検診によって症状をチェックしていくことが大切です。
性行為後に膀胱が刺激され、下腹部の痛みとともに排尿痛や頻尿といった症状が現れる場合があります。
こうした性行為後の膀胱炎を「性交後膀胱炎」と呼び、主に女性がかかりやすい病気です。残尿感があったり、排尿時に気張らないと出てこなかったりする場合は、なるべく早めに医師へ相談しましょう。
放置してしまうと血尿が出たり、腎盂腎炎へ進行したりする可能性があります。
性行為の体位や挿入の深さによって、子宮や膣が物理的に刺激を受けてしまい、重だるさや痛みを感じる場合があります。
挿入時、子宮口に届くレベルで強く刺激を加えてしまったり、膣の長さや性器の角度などの相性に問題があったりとさまざまな原因が考えられるでしょう。
こうした物理的刺激が影響している場合は、激しい動きを伴う性行為を避け、挿入角度や深さを調整し、パートナーとコミュニケーションをしっかりとって、お互いがリラックスしながら行うことが大切です。
性行為後の痛みには経過観察で問題がないものもあれば、重大な疾患が隠れている場合もあります。これからご紹介する症状が見られる場合は、様子見をせず、すぐに医療機関を受診しましょう。
それぞれの症状で考えられる疾患や注意点についてご紹介します。
じわじわと広がるようなにぶい痛みではなく、突如として走る激しい痛みは、卵巣出血や卵巣腫瘍の捻転・卵巣腫瘍の破裂といったトラブルが考えられます。
緊急を要する症状の場合も多いため、すぐに医療機関を受診しましょう。
最初は違和感程度だったにも関わらず、時間が経つにつれて痛みが増していく場合、炎症が進行している可能性が考えられます。
先ほどご紹介した「骨盤内炎症性疾患」などが疑われるため、こちらも早急に医療機関を受診しましょう。
性交後から時間が経っているにもかかわらず痛みが引かない場合や、翌日以降も違和感が残る場合は、子宮筋腫や子宮内膜症といった病気が疑われます。
症状が進行するとさらに痛みが増すことも考えられるため、耐えられる痛みであっても我慢せず、かかりつけ医で相談しましょう。
痛みだけでなく発熱や不正出血がある場合は、性感染症や骨盤内炎症性疾患の可能性が高いといえます。
他にも悪寒や悪臭のある分泌物が確認された場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。女性側だけでなく、パートナーも一緒に受診してもらうことが大切です。
性行為後の下腹部痛が常態化している場合は婦人科へ相談しましょう。
なかには時間が経つにつれて症状が悪化してしまう疾患もあるため、自力での改善を目指すのではなく、医師にしっかりと診断してもらうことが大切です。
病気が原因でないにもかかわらず痛みを感じる場合は、それぞれ以下のような対処法を試すと良いでしょう。
病気が疑われる痛みの場合、自己判断で対処せず、専門医への相談が必須となります。
普段からかかりつけ医を持ち、トラブルがあったときはすぐに相談できるよう準備をしておきましょう。
性行為後の下腹部痛を防ぐためには、日常的にケアを行うことも重要です。
女性側はもちろん、パートナーもリラックスして性行為に及べるよう、日頃から以下に挙げる5つのポイントに注意しておきましょう。
それぞれのケア方法について詳しくご紹介します。
膣の乾燥によって痛みが生じないように潤滑剤を用いたり、痛みを感じずに済む体位を選ぶことで、女性側への刺激を軽減できます。
お互いがリラックスした状態で行えるよう、部屋を暗くしたり、入浴で身体を温めたりすることもおすすめです。
性感染症にかかっていないか、性行為をする前にお互いが検査を受けて、安全な状態か確認することがとても大切です。性感染症があれば事前に治しておく必要があります。
性行為の前後は陰部を清潔に保ち、コンドームも使用して膀胱炎や性感染症のリスクを減らしましょう。
女性側にトラブルが起こりやすいと思われがちですが、男性側の状態によってお互いにトラブルが起こる可能性もゼロではありません。
排卵痛を伴うトラブルが気になる方は、基礎体温を記録するなどして排卵期を知っておくと便利です。
排卵期の性行為を避けることにより、痛みなどのトラブルを最小限に抑えられるでしょう。
近年は排卵や月経を管理するアプリも多数登場しており、依然までと比べて自分で管理しやすくなっています。
腸内のガスや便が骨盤を圧迫することにより、性交時や性行為後に痛みが出る場合があります。
水分や食物繊維を十分に摂取し、日頃から便秘の解消に努めましょう。
デスクワークをしている方などは運動不足になっている可能性も高いため、日々適度な運動を心掛けることが大切です。
痛みを我慢して無理に性行為を続けても、身体的・精神的にストレスが溜まってしまいます。
痛みのある場所を確認したり、体位の変更などの希望を伝えたりすることで、お互いに心地よい性行為ができるでしょう。
普段からパートナーと積極的にコミュニケーションを取り、要望を伝えやすい関係性を構築することが大切です。
咲江レディスクリニックは、性交痛を始めとした女性特有のお悩みに寄り添い、女性医師自らが丁寧に診察を行っています。
婦人科検診はもちろん、子宮内膜症や子宮筋腫の早期発見、性感染症の検査・治療にも対応しており、何かあったときのかかりつけ医として利用していただけます。
また、10年以上性交痛の治療を行ってきた経験を活かして、その方に合った性交痛の出にくい体位などもきめ細やかに指導することができます。
さらに、オンライン診療も実施しており、忙しい方や来院に不安のある方でも気軽に相談が可能です。
「ちょっと気になるかも」といった初期の段階であっても、一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。
ご予約はこちらから性行為後の下腹部痛には、排卵や体位といった一時的なものだけでなく、重大な病気が隠れている場合があります。
痛みが繰り返したり徐々に強まったりする場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。