タイミングによっては不快感があったり、痛みが発生したりする場合もある生理前の性行為。
こうしたトラブルのほとんどは女性側に発生するため、パートナーと気持ちを共有したり、お互いの身体を労わったりすることが大切です。
本記事では、生理前の性行為で痛みが発生する理由や、痛みを抑えてリラックスするための方法についてご紹介します。
生理前の性行為による痛みの好発部位をイラスト化してみましたので、各部位の痛みの原因を確認していきましょう。
生理前は子宮内膜が厚くなり、ホルモンの影響で子宮が敏感になっています。
性行為で子宮頸部が刺激されると、「ズーン」とした鈍痛を感じやすくなります。
奥の方が痛かったり(深部性交痛)、圧迫されるような痛みが特徴です。
また、オーガズム後に子宮が収縮して痛みが出る場合もあります。
排卵後~生理前は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で、卵巣が腫れたり張った感じになることがあります。
特に排卵後の卵巣(黄体形成中の側)は敏感です。
左右どちらかの下腹部にチクチク・ズキズキとした痛みが走ることが多いようです。
ちなみに、体位によって強くなることもあります。
生理前は体に水分が溜まりやすく、骨盤内の血流が滞りやすくなります。
そうしたタイミングでの性行為によって、子宮・卵巣・靭帯にかけての部分が「重い」「だるい」「張る」といった違和感をおぼえることも。
特定の部位ではなく下腹部全体がズーンと重い感じが特徴で、性行為後に疲労感や痛みが残ることがあります。
生理前の性行為で痛みが発生する理由は、大きく分けて以下の4つが考えられます。
自身の痛みがどれに当てはまるのか、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
女性の身体は時期によってホルモンバランスが変わり、それによって排卵や月経が起こります。
特に生理直前は「エストロゲン」と呼ばれるホルモンが減少するため、分泌物が減り、膣が乾燥しやすくなることも。乾燥した膣で性行為を行うと、摩擦によって痛みが生じる原因になります。
また、エストロゲンの減少によって膣の粘膜が薄くなり、痛みや刺激を感じやすくなる点も原因の一つといえるでしょう。
生理が近づくと、女性の身体は子宮や卵巣周辺に血液が集中するようになります。
その結果骨盤内が充血や腫れを起こし、痛みや刺激を感じ取る神経が過敏になる方も珍しくありません。
通常の生活は問題なく送れていても、性行為の刺激によって骨盤周辺が圧迫され、痛みを生じる場合があります。
女性の下腹部に位置している子宮ですが、生理が近づくと子宮内膜が厚くなり、子宮そのものの位置が下へ移動しやすくなります。
一見わずかな変化にも思えますが、性行為時に子宮口へ圧がかかり、身体の動きに合わせて痛くなったり、奥まで挿入されると痛いといったお悩みの原因になります。
生理前にイライラしたり集中力が低下したりする方は、PMS(月経前症候群)を引き起こしている場合があります。
PMSでは精神面だけでなく身体的な影響が出ることもあり、感覚が過敏になり、性行為の際に痛みとして現れる可能性が高まります。
また、PMSによってイライラが募っていると、パートナーの些細な行動が引き金となって性行為への不満につながることも考えられます。
生理前でなければ気にならないような刺激でも、PMSによって生理前のみ強く感じる場合があるため、パートナーへしっかりと伝えておくことが大切です。
PMSがつらくて日常生活やパートナーとの関係性に問題が起きたら…と心配な場合は、ピルや黄体ホルモン製剤(ジェノゲスト)など薬の服用も検討しましょう
生理前の性行為で痛みを感じる状態が続くと、性行為そのものの回数が減ったり、パートナーとの関係が悪化してしまったりする可能性があります。
痛みを軽減しリラックスしながら過ごすためにも、以下の6つに注目しながら性交痛を減らしていきましょう。
それぞれの方法について詳しくご紹介します。
膣内が乾燥することで痛みが生じている場合は、市販の潤滑剤を使用することで摩擦が減り、痛みの緩和につながります。
ドラッグストアなどにも販売されていますが、周りの目が気になる場合は通販サイトでも購入できます。
なかには粘性の高いものや香りつきのものなどさまざまな種類がありますが、生理前のデリケートな膣に影響を与えないよう、低刺激タイプを選びましょう。
PMSによってストレスを感じていたり、以前の性交痛を思い出して緊張してしまったりする場合は、リラックスできる環境づくりから始めてみてはいかがでしょうか。
部屋を暗くしてお互いの顔を見えにくくしたり、急に挿入するのではなくマッサージから始めてみたりと、お互いにゆっくりと時間をとって性行為を行うことが大切です。
性行為前にぬるめの湯船に浸かるなど、身体を温めてあげることも効果的です。
子宮の位置が変わったり、骨盤が充血したりすることで痛みを生じる場合、挿入時の体位を工夫してみることも一つの方法です。
男性が女性に覆いかぶさるような体位はなるべく避け、女性が上になったり、お互いが横向きになって挿入したりすると良いでしょう。
お互いの身体の状況で無理のない体位は異なるため、パートナーと相談しつつ、痛みの出ない体位を見つけましょう。
お腹や腰を暖めることによって骨盤内の血流が促進されると、筋肉の緊張がほぐれ、痛みを感じにくくなります。
先ほど触れたように湯船へゆっくりと入浴してみたり、衣服を脱ぐ前に湯たんぽやカイロでお腹を温めてみたりすると良いでしょう。
パートナーと相談し、衣服を着たまま性行為を行うという方法もあります。
どんな対策を用いても痛みが改善されない場合は、市販の痛み止めを服用することで軽減される場合があります。
痛みがあるからといって性行為をやめたくないと感じる方も多く、予防的に痛み止めを飲んでから性行為を行う方も多いでしょう。
とはいえ、性行為があるたびに痛み止めを服用し続けることはおすすめできません。
まずは性行為時の痛みについて医師へ相談するとともに、自分に合った痛み止めの種類や常用できる期間・リスクなどをしっかりと把握することが大切です。
「痛みがあってもパートナーのために性行為をやめられない」という方もたくさんいらっしゃいます。
性行為はいわばパートナーとのコミュニケーションツールであり、愛撫や挿入を通してお互いの気持ちを知る場面も多いでしょう。
心地良いと感じたときに素直に伝えるだけでなく、痛みや不快感についても相談し合い、相手に寄り添いながら行うことが大切です。
生理前の性行為で痛みがあり、さまざまな対策を試しても改善されない場合は、何らかの病気が潜んでいる可能性があります。
以下に挙げた代表的な病気をチェックするとともに、自身の症状や不安について医師へ相談することが大切です。
それぞれの病気について、具体的な症状を確認していきましょう。
本来子宮の中にあるはずの内膜組織が、卵巣や腹腔内などさまざまな場所に増殖してしまう病気です。
生理痛が重くなることでも知られていますが、同時に性行為で強い痛みを感じる場合があります。
放置してしまうとさらに痛みが悪化したり、不妊の原因になったりするため、早めにかかりつけ医へ相談しましょう。
悪性ではなく良性の腫瘍が子宮の筋肉にできてしまう病気です。生理が重かったり痛みを伴ったりすることに加え、子宮の形状が大きく変わり、性交痛をもたらす可能性があります。
軽度な場合は経過観察となる場合もありますが、サイズが大きかったり位置が悪かったりすると手術になることも考えられます。
女性の骨盤内にある臓器のうち、一つもしくは複数の臓器に炎症が起きてしまう感染症の一種です。
子宮・卵巣・卵管など炎症が起こる部位は人によって異なりますが、主な原因は性感染症といわれており、進行するとともに痛みが増していくといった特徴があります。
子宮頸がんは子宮の入り口付近に、子宮体がんは子宮の内側にできるがんです。
それぞれ原因や治療法が異なりますが、いずれも進行すると性行為時に痛みを感じたり、出血が見られたりする可能性があります。
これらのがんは自覚症状が少ないことでも知られており、早期発見が難しいため、少しでも異変を感じた際はすぐに婦人科を受診しましょう。
一言で性感染症といってもさまざまな種類があり、一概にどれがもっとも危険かは判断できません。
これらは膣や子宮頚部などに炎症を起こし、痛みや不快感を引き起こす場合があります。
通常は痛みだけでなく、膣分泌物の量が異常に増えたり、かゆみや下腹部痛を伴ったりすることが多く、異変に気が付きやすい病気ともいえます。
咲江レディスクリニックは、性交痛の治療の経験豊富な院長が的確に診断し、性交痛を始めとした女性特有のお悩みに寄り添い、女医自らが丁寧に診察を行っています。
婦人科検診はもちろん、子宮内膜症や子宮筋腫の早期発見、性感染症の検査・治療にも対応しており、何かあったときのかかりつけ医として利用していただけます。
また、オンライン診療も実施しており、忙しい方や来院に不安のある方でも気軽に相談が可能です。「ちょっと気になるかも」といった初期の段階であっても、一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。
ご予約はこちらから生理前の性行為で痛みを感じる方は決して珍しくなく、多くの女性が体験するいわば自然な現象の一つです。
しかし原因を正しく知り、その内容によって正しい対処を行うことで、痛みの軽減につながるでしょう。
婦人科疾患が隠れている可能性も考慮し、痛みが続く場合はすぐに診察を受けることをおすすめします。